扇町キネマ・インディアンムービーウィーク2025

国語が存在せず、地域ごとに公用語が並立する多言語大国インド。
その映画産業もまた、言語ごとに幾つにも分かれ、それぞれが独自の映画的風土をもち、各言語を母語とする観衆から厚い支持を得ています。
インディアンムービーウィークでは、映画製作がさかんなインドの言語圏から日本未公開作品を中心に選び、多様なインド映画を字幕付きで紹介します。
ぜひ劇場でお楽しみください!

《上映作品》
『拳銃/兵士の休暇』
(原題:Thuppakki)

監督:A・R・ムルガダース
出演:ヴィジャイ、カージャル・アグルワール、ジャヤラーム、ヴィドゥユト・ジャームワール
音楽:ハリス・ジャヤラージ
2012年 / インド / タミル語 / 170分 / PG12
©︎V.Creations
配給:SPACEBOX
ムンバイ在住のタミル人で、軍人としてカシミールで勤務しているジャガディーシュは、帰省中にバスを狙った爆弾テロに遭遇する。独自に調査を進めた彼は、より大規模な同時多発テロ計画の糸口をつかむ。同僚たちと共にテロを未然に防ごうとする彼と敵の司令官との間での息詰まる策略の応酬。『カッティ 刃物と水道管』『サルカール 1票の革命』で知られる、A・R・ムルガダース監督とヴィジャイが最初にタッグを組んだ作品で、公開年、タミル語作品のトップヒットとなり、多くの映画賞を受賞した。
『ジガルタンダ』
(原題:Jigarthanda)

監督:カールティク・スッバラージ
出演:シッダールト、ボビー・シンハー、カルナーカラン、ナーサル
ジャンル:ドラマ / コメディ
2014年 / タミル語 / 171分 / PG-12
©Group Company
配給 SPACE BOX
映画監督を目指すカールティクは、映画監督コンテスト番組に出場する。セミ・ファイナルで選外になりかけたが、審査員を務めたプロデューサーから長編映画の製作を持ちかけられる。提示された条件は、壮絶なギャングの抗争をテーマにした映画をつくることだった。カールティクはおっかなびっくり、南インドのマドゥライで悪名を轟かせる凶悪なギャングのボス、セードゥに関してリサーチを始める。タミル語映画界の若き鬼才、カールティク・スッバラージ監督の出世作である本作は、秀逸な音楽にのせた「ギャングスター・ミュージカル」。緊張感が漂う前半からは予測できないエンディングに度肝を抜かれる。残虐かつユーモラスなギャングを演じたボビー・シンハーは、インド国家映画賞をはじめとする主な映画賞の助演賞を総ざらいした。原題は「心を冷やす」という意味を持つ、マドゥライ名物のアイスクリーム・シェイクの名前。
『ジガルタンダ・ダブルX』
(原題:Jigarthanda Double X)

監督:カールティク・スッバラージ
出演:ラーガヴァー・ローレンス、S・J・スーリヤー、ニミシャ・サジャヤン
ジャンル:スリラー
2023年/インド/ タミル語/172分/ PG12
©Stone Bench Films ©Five Star Creations ©Invenio Origin
配給 SPACE BOX
新米警察官のキルバイは不可解な事件に巻き込まれ、自身が牢に繋がれる。彼は、政界に強いコネクションを持つ悪徳警視ラトナクマールに脅されて、マドゥライ地方のギャングの親分シーザーの暗殺を命じられる。シーザーに近づくために、彼はサタジット・レイ門下の映像作家と身分を偽り、彼を主演にした映画を撮るふりをする。『ジガルタンダ』(2014)のフランチャイズシリーズ2作目。カールティク・スッバラージ監督が激烈な社会批評を盛り込んだ衝撃作。
『ウスタード・ホテル』
(原題:Ustad Hotel)

監督:アンワル・ラシード
出演:ドゥルカル・サルマーン、ニティヤ・メーノーン、ティラカン、シッディク、マームッコーヤ
ジャンル:ドラマ
2012年 / インド / マラヤーラム語 / 151分 / G
©︎Magic Frames
裕福な家庭に生まれドバイで育ったファイジはシェフになるのが夢だったが、それに反対する父から勘当される。カリカットの祖父の元に身を寄せ、祖父の経営する大衆食堂を手伝いながら成長していく。カリカットのムスリム社会を背景に、マラバール・ビリヤニ、パロタなど、ケーララ州の名物料理の垂涎ものイメージを交えながら、青年の成長をのびやかに描く。ゴーピ・スンダルの音楽も魅力的。
『ストリートダンサー』
(原題:Street Dancer 3D)

監督:レモ・デソウザ
出演:ヴァルン・ダワン、シュラッダー・カプール、プラブデーヴァー、ノーラー・ファテーヒー
2020年 / インド / ヒンディー語 / 142分 / G
日本字幕翻訳:佐藤裕之
©Remo D’Souza Entertainment ©T-Series ©UTV Motion Pictures
配給:SPACEBOX
イギリス・ロンドンで生まれ育ったインド系、パキスタン系の若者たちが、
10万ポンドの賞金を目指しダンスバトル“グラウンド・ゼロ”に挑む!”
アメリカの公開オーディション番組「ワールド・オブ・ダンス シーズン3」で2019年に優勝した「The Kings」や、「アメリカズ・ゴット・タレント」で2020年に優勝した「V.Unbeatable」など、近年、世界のダンスコンテストでインドのダンスグループが注目すべき成果を収めている。ダンス大会に挑む若者たちの情熱と友情を、インド映画界のトップ・コリオグラファーであり、映画監督のレモ・デソウザが描いた作品が、『ストリートダンサー』だ。
ヴァルン・ダワン(スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え! No.1!!)とシュラッダー・カプール(サーホー)を主演に、インド映画界の伝説級のダンサー&コリオグラファーのプラブデーヴァーが、2人をつなぐ重要な役を演じる。実際にトップクラスのダンサーとして活躍するキャストががっちりと脇を固め、劇中のコンペティションは、演技のレベルを超え、手に汗握るリアルなダンスバトルに仕上げられている。
<STORY>
舞台はロンドン。インド系の青年サヘージ(ヴァルン・ダワン)率いるヒップホップ・ダンスグループ「ストリートダンサー」と、パキスタン系の女性イナーヤト(シュラッダー・カプール)率いるチーム「ルール・ブレイカーズ」はライバル同士で、街中で鉢合わせするたびに、火花を散らすダンスバトルを繰り広げていた。そんなある日、10万ポンド(約1,800万円)の優勝金が獲得できるダンスバトル「グラウンド・ゼロ」の開催が発表される。別々の目標のもとグラウンド・ゼロに参戦したサヘージとイナーヤトだったが、あるきっかけから友情が芽生え、同じ目的を持ち、コンペティションを勝ち進んでいく…。
『政党大会 陰謀のタイムループ』
(原題:Maanaadu)

監督:ヴェンカト・プラブ
出演:シランバラサン、S・J・スーリヤー、カリヤーニ・プリヤダルシャン、S・A・チャンドラシェ―カル、Y・G・マヘーンドラン、アラヴィンド・アーカーシュ、カルナーカラン、プレームジ・アマラン
2021 年 / インド / タミル語 / 147 分
©V House Productions
配給:SPACEBOX
政党大会の会場で要人暗殺テロの犯人に仕立て上げられた青年が永遠とも思われるタイムループに巻き込まれていく!?
この奇想天外な物語を作り上げたのは、2007 年のデビュー以来一貫して都市型のニューウェーブ映画を撮り続けてきたヴェンカト・プラブ監督。主演は、長年タミル語映画界のスターのひとりでありながら、本作が日本初公開作品となるシランバラサン。シランバサラン演じる 青年・ カーリクを陥れる警察官・ダヌシュコディを『ジガルタンダ・ダブルX』でなどで人気急上昇中のS・J・スーリヤーが演じている。 ヒンドゥー至上主義やマイノリティーへの排斥の空気を正面から批判しながらも、血と汗と笑いがほとばしる痛快 ポリティカル・アクション!
『無職の大卒』
(原題:Velaiilla Pattadhari)

監督:ヴェールラージ
出演: ダヌシュ、サムドラカニ、アマラ・ポール、ヴィヴェーク
ジャンル:ドラマ
2014年 / タミル語 / 133分 / G
© Wunderbar Films
今は運なく無職でも、未来は俺たちのもの
大学で土木工学を学んだラグヴァランは、職が見つからず鬱屈している。
ようやくチャンスを掴むが、大手建設会社の御曹司と対決する。
インド映画定番の「職のない若者」をダヌシュが好演。
「職のない若者」というインド映画の定番テーマを、ダヌシュならではのキレのあるアクションとダンス、恋愛、ファミリー・センティメントで彩った、爽やかで痛快な一作。初のセルフ・プロデュース作でダヌシュの持ち味が最大限に活かされている。
『銃弾と正義』
(原題:Vettaiyan)

監督・脚本:T・J・ニャナヴェル
出演:ラジニカーント、アミターブ・バッチャン、ファハド・ファーシル、ラーナー・ダッグバーティ、マンジュ・ワーリヤル、リティカー・シン、ドゥシャーラー・ヴィジャヤンキショール
2024年製作/161分/G/インド
配給:SPACEBOX
凶悪犯に対して、逮捕状請求・逮捕・起訴・裁判などの手続きを省略して、警察官が犯罪現場で射殺する「特例射殺〈エンカウンター〉」。
警察官が行使する暴力に正面から疑義を突きつける社会派アクション!
〈INTRODUCTON〉
『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995年)により旋風を巻き起こし、第一次インド映画ブームの立役者となったラジニカーント。大ヒット作『ジェイラー』(2023年)に続く本作は、カースト差別問題を大胆な切り口で描いた『ジャイ・ビーム – 万歳ビームラーオ』(2021年)で高い評価を得た新進監督T・J・ニャーナヴェールと組み、警察内部で行われる特例射撃〈エンカウンター〉をテーマとした警察ドラマだ。ヒンディー語映画界の大俳優アミターブ・バッチャンが、ラジニカーント演じる警視の行動に疑問を呈する法律専門家として出演。インドを代表する2大俳優、“スーパースター”ラジニカーントと、“ビッグB”アミターブ・バッチャンのメガ・コラボレーションも話題となり、公開年タミル語作品3位のヒットとなった。
しかし本作のスケールの大きさは興行収入だけではない。ヒンディー語映画界の頂点にいるだけでなくインド映画全体の長老ともいえるアミターブ・バッチャンとラジニカーントとの共演が、ヒンディー語作品『タイガー・炎の3兄弟』(1991年)以来32年ぶりに実現したことは事件と言ってよく、しかも本作がアミターブ・バッチャンにとって81歳(本国公開時点)でのタミル語映画デビューとなった。
他にも『バーフバリ』2部作(2015/17年)のラーナー・ダッグバーティや『ヴィクラム』(2022年)のファハド・ファーシルなど実力派俳優たちがもり立てる本作、警察官が行使する暴力に正面から疑義を突きつける、メッセージ志向の硬派な面を持ち、見ごたえ充分なものとなっている。
チケットはこちら ⇒ 「扇町キネマ」